ダンボールは私たちの生活において、とても身近なモノです。ネット注文をすればダンボール箱に入った状態で届くことが多いですし、引っ越しをした際に荷物をダンボールへ入れたまま押し入れへ収納、というご家庭もあることでしょう。様々な商品を扱う流通業界においても、欠かすことのできないダンボール。
皆さん、ダンボールが誕生したきっかけをご存知ですか?実は、荷物を入れるためではありませんでした。19世紀の頃、場所はイギリスでシルクハットが流行したのですが、頭を完全に覆ってしまうため汗が止まらない…そこで登場したのがダンボール素材です。汗を吸収させるために内側に取り付けて使用していました。通気性を高めるだけでなく、クッション性も兼ね備えた優秀な素材だったのです。
このような経歴を持つダンボール、今回は様々な観点からダンボールの基本知識を徹底解説していきます。
1.なぜ「ダンボール」と呼ぶの?《歴史》
1-1.ダンボールの誕生
1-2.ダンボールの発展
2.「ダンボール」が丈夫なワケ《形状》
2-1.力を分散する「トラス構造」
2-2.様々な耐久試験をパスしたダンボール
3.「ダンボール」ができるまで《製造》
3-1.リサイクル紙がダンボールの材料[製紙]
3-2.ダンボール原紙3枚を合体[貼合]
3-3.畳んだ状態で出荷[製箱]
4.「ダンボール」ってスゴイ!《機能》
4-1.リサイクルできて衛生的
4-2.オーダーメイド可能なダンボール
4-3.情報を発信する表面プリント
5.各所で大活躍する「ダンボール」《応用》
5-1.防水加工を施す
5-2.組み立てにテープ不要
5-3.POPや販促物として使用
5-4.パレットや工作用など箱以外で活躍
まとめ
ダンボールは英語で「corrugated cardboard (paper)」と表記します。「段ボール」と書くこともあるので、日本で誕生した言葉であることは推測できるでしょう。日本でダンボールが生産されるようになるまでは、海外から輸入されていました。和紙と比べればグニャグニャしているので、「しわしわ紙」や「なまこ紙」と呼ばれていたそうです。
日本でダンボールが登場したのは、井上貞次郎氏によるもの。綿繰り機を基にして、段をつけた「繰りっ放し」を製造できるようにしました。厚紙のことをボール紙と呼ぶことがありますよね。段の付いたボール紙であることから「段ボール(ダンボール)」と名付けられたのです。
20世紀初頭の日本では木箱を用いることが一般的でした。しかし木は重いですし、箱を作るのに釘が必要となります。金属が不足していた時代もあるので、徐々にダンボールが注目されていきました。時代が進むに連れ森林保護が叫ばれるようになり、リサイクルが可能なダンボールの需要は増していったのです。
製造技術もかなり向上していき、防水・はっ水など機能性の高いダンボールも誕生して、幅広い分野で利用されるようになっていきました。
ダンボールは紙製なのに、なぜ丈夫なのだろう?と疑問に思ったことはありませんか。その秘密は「ライナ」とよばれる表面の板紙の間に、波打った「中しん原紙」が挟まっているからです。横から見てみると三角形と逆三角形が連なっているような形であり、トラス構造になっています。
東京スカイツリーや東京タワーを見上げると、三角形をしたトラス構造が見て取れます。三角形の頂点部分に力が加わっても、それが両辺へと分散されるため強度を保てます。ある実験では自動車のタイヤ4箇所の下にダンボールを置いたところ、箱がつぶれることなく自動車を支えたという報告もあります。
輸送中にダンボールが破けてしまっては困るため、開発過程で様々な耐久試験が行われています。具体的には、つぶれにくさや板紙と中しん原紙の接着の強さ、そして落下試験や振動試験などです。このような試験が実施されることにより、安心安全なダンボールが出来るのですね。
ダンボールは主に3つの工程を経て完成します。それが製紙・貼合・製箱です。
現代では「エコ」が重視されており、ダンボールもその潮流に乗っています。材料の90パーセントが使用済みダンボールであり、世界を見てもかなりハイレベルなリサイクル製造を行っています。
まずは使用済みのダンボールを水でほぐして、繊維状にしていきます。その次に土や砂、プラスチックなどの異物を除去した上で、乾燥させてシートを作っていきます。
続いては表面の「ライナ」と、波打った形状の「中しん原紙」を貼り合わせていく工程です。複数の機械を用いて、糊付けを行って長い長いダンボールシートが完成します。これを適切なサイズにカットしていくまでがこの工程。
ここまでくると最終段階、使用する業者や商品に合わせて、表面にプリントを施していきます。その際、切れ込みを入れてダンボールが組み立てられるようにします。一般的には運搬がしやすいよう、畳んだ状態で出荷されていきます。
お菓子工場などを見学すると、箱詰めの段階で二本のアームを持った機械がダンボールを広げていく様子が見られます。もちろん手で製箱して商品を詰めていくということもあるでしょう。
シンプルな構造の厚紙と思いきや、様々な特長を兼ね備えているダンボール。ここではその魅力に迫ってみましょう。
価格が安定している卵が「物価の優等生」と呼ばれるように、ダンボールは「リサイクルの優等生」と称されることがあります。前述のように、ダンボール原料の90パーセントがリサイクルしたものであり、持続可能な包装材として重宝されています。
ダンボールの元々の素材は木材(パルプ)であり、間伐材や計画的に管理・生産されている木材を使用していることが多いため、自然環境への負担をできるだけ軽減しています。糊として使用されるのは、トウモロコシからできるコーンスターチ。いずれも天然素材であり、最終的には土に還すことができる材料を用いているのです。
ダンボールの使用は基本的に一度限りとされています。水濡れや運搬の際の形状変化等による影響で、強度を永続的に保つことができないからです。だからこそ、常に衛生的なダンボールを使用できるという長所もあります。木箱のように、虫食いやニオイが付いたままになる心配もありません。
ただし、自宅等で収納ボックスとして使用する際は、使いまわすこともありますよね。そういった幅広い活用ができるのもダンボールの魅力でしょう。
ダンボールは様々なサイズがあります。宅配便会社を利用する際、そのことを強く意識するのではないでしょうか。大手の宅配便会社では、ダンボール箱の縦・横・高さを測り、その合計の数値によって配送料を決定しています。規定数値を少し上回ってしまい、料金が高くなってしまった…という経験はありませんか?
大手宅配便会社では専用のダンボール箱を用意しており、配送料に合わせて複数サイズの箱が選べます。このように用途に応じたサイズを提供できるのがダンボールです。
商品のサイズに合わせ、業者が販売店がオーダーメイドでダンボール箱を発注することも可能です。1枚からという訳にはいかないので、ある程度のロット数が必要となりますが、やはりサイズを指定できる自由度の高いダンボールは便利です。
ダンボールの表面には様々な情報が盛り込まれています。もちろん無地でシンプルなダンボールもありますが、商品のロゴが入っていたり会社の電話番号など連絡先が明記されているケースも。
最近ではバーコードをプリントすることによって、開封することなく中の商品や個数そして発注日などを確認できるというシステムもあります。
さらにギフト用として、素敵なカラーリングが施されたダンボール箱も使い勝手が良いです。サイズだけでなく、プリントの内容によってダンボールの用途が広がっていきます。
ダンボールは日々進化しており、高機能な箱も登場しています。その例をいくつか見ていきましょう。
ダンボールは紙が原料なので、やはり水濡れには強くありません。そこで表面に防水加工・はっ水加工を施すことによって、その問題を解決します。リサイクルが困難になるため、加工の際に使用する防水材は限定されますが、それでもちょっとした水濡れの対策には効果があります。
ダンボールを組み立てる時のことをイメージしてください。底を閉じるためにガムテープを用いますよね。ところがテープが不要というダンボール箱もあるのです。底面を特殊な形にカットすることで、はめ込むようにして底を閉じていきます。4枚の紙が重なっているので強度も保たれています。開封する時やダンボールを解体する時も、こういったタイプの方が便利ですよね。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、ダンボールを使用したPOPもしくはショーケースを見たことはありませんか?特に新発売のお菓子などが、カラフルなプリントが施されたダンボール箱の上に並んでいることが多いです。棚に陳列するよりもお客さんの目に止まりやすいため、売上がアップします。販売期間終了後も片付けが簡単であり、スペースが限られている店舗にとっては魅力的な販促物です。
ダンボールの活躍の場は、箱だけではありません。とても丈夫であるため木材に変わってダンボールをパレット(すのこ状の台)として利用することがあります。軽量なので持ち運びもしやすいです。
また、ダンボールアートという芸術作品に使用されることもあります。ダンボールを切り取ってパーツに分け、精巧な作品を仕上げる芸術家もいます。小学校の宿題でダンボール工作をすることもありますよね。大人の趣味としても、最近では人気を集めています。
ダンボールの誕生や、その構造そして機能性の高さなど基本知識を見てきました。普段何気なく使用しているダンボールの魅力を感じ取って頂けたのではないでしょうか。今後もダンボールを生活の中で活用していってください。