「ユニバーサルデザイン」というフレーズを聞いたことはありますか?これは、できるだけ多くの人が利用しやすいデザインを採用することを意味します。
高齢者や障がいを抱える人のための「バリアフリー」という考え方が普及しましたが、それに加えて国籍や言語そして文化の違いにも対応したデザインが求められるようになったのです。
その考え方はダンボール業界へも広がっていきました。今回は、皆が使いやすいユニバーサルデザインのダンボールを、具体的な事例も交えてご紹介していきます。
1.ユニバーサルデザインとは
1-1.ユニバーサルデザインの7原則
1-2.各種業界が協力
2.視覚的要素から考える
2-1.イラストで認知度アップ
2-2.見やすい書体を採用
2-3.文字に濃淡をつける
3.その他の五感的要素
3-1.触覚
3-2.嗅覚・聴覚
4.簡単にオープンできるダンボール
4-1.テープを剥がしやすい
4-2.糊付けダンボールを開封
4-3.取り出しやすい工夫
4-4.陳列しやすい多機能型
5.確実にロックできるダンボール
5-1.ガムテープを貼りやすい
5-2.テープいらずのロック法
5-3.新しいデザインを表彰
6. まとめ
ダンボールの手触りはどれも同じと思われかもしれませんが、エンボス加工を施すなど様々な工夫が加えられているものが使われています。あるビールの24缶入りダンボールで採用された事例なのですが、エンボス加工をすると持ち運ぶ際に滑りにくくなるとともに、高級感が出てイメージアップにつながりました。ビールはお中元やお歳暮など贈答用として利用することがありますので、ダンボール箱全体がギフトボックスのような役割を果たしたのです。
嗅覚で言えば、ダンボールを接着する際に使う薬剤のニオイをカットします。聴覚なら、ダンボールを保管ボックスのように使い開け閉めする際、カチャッと音を出して閉じたことを分かりやすくするといったものが考えられます。ダンボールを食べるということはありませんから、五感のうち味覚は関係ありませんが、将来的には食べられるダンボールも開発されるのでしょうか…。
ダンボールの上部や下部がガムテープによって留まっていることが多いです。ところが、テープの端がなかなか剥がれず、爪を痛めてしまうということも。そこで簡単に開封できるダンボールが考案されました。テープの両端部分のダンボールにミシン目の入った切り込みが付いており、そこを引き上げるだけでダンボールの一部ごとガムテープが容易に剥がれます。こういったアイデアは当たり前に見えて、意外と導入されていないものなのです。
ガムテープではなく、ダンボールの上部が糊付けされているものもあります。2リットルペットボトル6本入りのダンボールなどでよく見かけますが、意外と力を入れなければ剥がれにくく誰でも簡単にという訳にはいきません。そこである飲料メーカーでは、上部の端にミシン目を入れ、そこを起こしつまんで剥がせるようにしました。ペットボトルを箱買いする家庭もありますので、こういった工夫は便利さにつながります。
梱包物がダンボール内にキッチリ詰まっていると、なかなか取り出せないというケースが見られます。確かに輸送中に揺れ動くことがないので安全度は高いのですが、取り出す際に商品を傷つけてしまっては元も子もありません。そこでダンボールを開いた時に、上部の一部が押し開けるように切り込みが入っていて、簡単に取り出せるというダンボールが考案されました。一つ取り出せれば残りはスルスルと出てきます。
スーパーマーケットにおける果物・野菜の陳列をイメージしてください。売り場にミカンやジャガイモを箱から出して並べている所も多いですが、ダンボールがそのまま陳列台になれば便利ですよね。しかも4種類の形にオプションパーツなしでチェンジするなら、果物・野菜の性質によって陳列棚の形を簡単に選択できます。
ある文具メーカーが開発したのですが、リンゴなどを整然と並べるためステージ台にしたり、大根を並べるために傾斜台にしたりというチョイスが可能です。玉ねぎなどを山のように積む投げ込み台やキャベツなど大型の野菜を積むボックス台としても使えます。誰でも簡単に台を作れるのは、ユニバーサルデザインに該当すると言えるでしょう。
ダンボールの上部をガムテープで留める際、一人で作業をしているとパタパタと勝手に開いてしまい、テープを貼るのが難しいという状況に陥ったことはありませんか。そこで、中央部分に小さな差し込み式のロックを付けることで仮留め状態にして手を離し、しっかりとテープが貼れるようになります。ダンボールの梱包作業が楽になることでしょう。
野菜を農家から市場そして店頭へと運ぶ際に、よくダンボールが用いられます。その際、一つ一つのダンボールにテープを貼ったのでは事あるたびに剥がさなくてはならず二度手間です。そこで、ダンボールの上部に工夫を施してスライド式に箱をロックできたり、カニのはさみのような形で両側をはめ込んだりといったロック法が使われています。
底の部分につまみを付けて、その上に野菜を置くことによってその自重で底が抜けにくくなるといったダンボールも用いられています。かつては金属のステーブル(封緘材)が用いられていましたが、廃棄時に取り外すのが大変だったため、こういったロック機能の付いたデザインは重宝されているのです。
画期的なデザイン、便利なユニバーサルデザインなどは各種団体のコンテストへ応募することにより、表彰が行われます。例えば「日本包装技術協会」では日本パッケージングコンテストを毎年開催しており、ある年度では家電メーカーの薄型テレビにおけるユニバーサルデザイン包装が、経済産業大臣賞を受賞しました。
1957年に創設されたグッドデザイン賞は、ダンボールに限らず様々な業界のデザインを審査していますが、その中にもユニバーサルデザインに該当する作品が受賞しています。
また日本だけでなく、アジア包装連盟が主催する「アジアスター」というコンテストにおいても、日本発のダンボール関連デザインが何度も受賞しているのです。世界規模で見ていけば、さらに画期的なユニバーサルデザインと出会えることでしょう。