私たちの身近にあるダンボール、何気なく使っていますが日本国内で一年間にどのくらい生産されているかご存じですか?近年の経済産業省による統計調査を見てみると、ダンボールシートの年間生産量は120億平方メートルを超えています。ですが、そう言われてもイメージできる量ではありませんね。
それでは、具体的な比較対象を挙げてみましょう。弊社の所在地である東京都は約22億平方メートルなので、都内全てにダンボールを5~6回繰り返し敷き詰められるという計算になります。経済産業省の統計は従業員50名以上の会社を対象としているので、実際は140億平方メートル前後の生産量を誇ると言われています。
今回のコラムでは、このように具体的な統計データをもとにして、ダンボールの実情に迫ってみたいと思います。ダンボールに関する色々な知識を身に着けて、ダンボール博士になりましょう!
1.ダンボールをたくさん使う業界は?
1-1.スーパーでよく見かけるダンボール
1-2.様々な業界で大活躍!
2.ダンボールの生産が多い季節は?
2-1.統計データを紐解いてみよう
2-2.新年度と商戦に向けて
3.ダンボールの生産量はアップorダウン
3-1.ダンボールの個人消費増加
3-2.景気に左右されるダンボール
4.段ボール生産のマメ知識
4-1.国内でどの地方で多く生産される?
4-2.海外で生産量の多い国は?
4-3.圧倒的なリサイクル率の高さ!
5.まとめ
今回コラムで使用するデータは経済産業省が発表しているものであり、毎月「経済産業省生産動態統計」として、業界ごとの生産・出荷・在庫等が公式ホームページに掲載されます。年単位で集計したデータ(年報)もあり、ダンボールは「紙・印刷・プラスチック製品・ゴム製品統計編」の「紙・パルプ」に分類。さらに詳しく見ていくと「消費部門別内訳」のデータがありますので、まずはこれに注目します。
皆さんは、ダンボールをどこでよく見かけますか?インターネット通販を頻繁に利用していたり、引っ越したばかりということなら「自宅」と答える方もいらっしゃるでしょう。街に出てみればダンボールがたくさん置かれているのはスーパーマーケット。ディスカウントショップや百円均一ショップにもダンボールが積まれていますね。これらのお店で販売されているものと言えば、食べ物や飲み物。加工食品と野菜・果物の青果物などを合わせて「食料品用」として分類されており、ダンボール生産量全体の5割以上を占めています。
平成25年から29年までの5年分の比率を追ってみても、57.1%(H25) 58.4%(H26) 58.2%(H27) 57.8%(H28) 57.3%(H29)と、それほど大きな変化はありません。食料品業界では安定してダンボールが求められていることが分かります。たしかに24本入りの缶やペットボトルが入った飲料や、野菜・果物はダンボールに入ってお店へ届くことが多いですし、ダンボールに入った状態でまとめ買いをするお客さんもいます。
では、食料品以外の業界ではどうでしょう。経済産業省の「消費部門別内訳」に取り上げられている項目は、食料品用以外ですと「電気器具・機械器具用」「薬品・洗剤・化粧品用」「繊維製品用」「陶磁器・ガラス製品・雑貨用」「その他の製箱用」が並んでいます。さらには「通販・宅配・引越用」というジャンルも。「包装用以外」という項目を除くと、どれが食料品用に続いて第2位にランクインすると思いますか?(平成29年の統計)
答えは「電気器具・機械器具用」。たしかに家電製品はダンボールに入っていますよね。「薬品・洗剤・化粧品用」「陶磁器・ガラス製品・雑貨用」と続いて、その次に「通販・宅配・引越用」が来ます。
統計をさかのぼっていくと「通販・宅配・引越用」が「陶磁器・ガラス製品・雑貨用」を猛追しており、今後もインターネット通販の需要が高まれば、この先数年で4位と5位が入れ替わるかもしれません。
「経済産業省生産動態統計」は毎月発表されていますので、今度はどの季節にダンボールの生産量が増えるかに注目してみましょう。近年だけに限ってしまうと傾向は分かりませんので、経済産業省のホームーページに掲載されている平成19年から29年までの動向を追ってみました。
月別のダンボール生産量の統計を比較していくと、平成29年で最も生産が多かったのは12月そして少ないのは1月です。平成28年は(多)4月(少)1月、平成27年(多)7月(少)1月、平成26年(多)10月(少)1月、平成25年(多)7月(少)1月となっていました。このように生産量が少ないのは毎年1月ですが、多いのは年によって異なることが分かりました。
ここから分かるのは単純なことではありますが、1月は正月休みがありますので機械が稼働していません。大きな工場であれば年末年始関係なしというケースも考えられますが、中小規模の会社であればお休みを取ることでしょう。
それではなぜ、生産量の多い月はバラけるのでしょうか。リーマンショック級の不況が訪れたり、震災が発生すると生産レーンがストップするため、統計へ大きな影響を及ぼします。そういった事象を除いて考えれば、4月は新年度を迎えるということで、企業同士が新たに契約を交わすなど新規経済交流が行われます。夏前はお盆のシーズンで贈答品が増え、夏のボーナス支給により個人消費の増加が見込めます。冬前は年末商戦が活発化し、お歳暮シーズンということもあってやはり個人消費が増えます。
「食料品用」「電気器具用」として使われることが多いダンボール、こういった季節のイベントや個人消費の動向が大きく影響していると予想されるのです。
古くからスーパーや個人商店へ、製造した商品を運ぶためにダンボールが多く使われていました。もちろんその流れは変わらないのですが、現在ではダンボールの個人消費が急増しています。インターネット通販の利用者が増え、大手ショッピングサイトではオリジナルのイラストが入ったダンボールを採用し、大量に発送を行っています。最近ではオークションサイトを通じて、個人to個人という形で商品を送るというケースも多くなってきました。オークションでは購入者の評価が重視されるため、出品者は見た目を気にして汚れたダンボールを使うのではなく、新品のダンボールに商品を入れるということも少なくありません。個人オークションが活発な状態が今後も続けば、新しいダンボールを購入する人が増加することでしょう。
前述のように「食料品用」や「通販・宅配・引越用」として利用されるダンボールは、景気に左右されがちです。商品の生産量が大きく影響します。これは国内だけに留まらず、世界中で好景気が続くと海外でのダンボール消費量が増加します。ここで問題となるのが古紙の価格高騰。ダンボールメーカーも価格に転嫁せざるを得なくなってしまうのです。
2019年6月7日の日本経済新聞には「段ボール需給 市場警戒」という記事が掲載され、見通しが立ちにくいダンボール需給について言及していました。古紙のだぶつきという話も出ています。また世界における貿易摩擦も今後大きく影響が出てくることでしょう。
国内には数多くのダンボール関連会社があります。ダンボールのシートを作る大型の機械を導入している会社や、ダンボール箱を製造する会社など二千以上存在するとも言われています。ダンボールは一枚あたりの単価が安いため、遠い地域へ輸送するとコスト的に合いません。そのため各地方において、地元でダンボールが消費されています。
それではどの地方でダンボール生産が多いのでしょうか。これはやはり人口数が大きく関わります。三大都市圏である東京・大阪・名古屋でのダンボール消費量が多いため、地方別にダンボール生産量を見ていけば、関東・近畿・中部・九州と続くと言われています。
では、海外に目を向けてみましょう。こちらも人口の数というのは大きな基準となります。人口が約14億人という中国がダントツで消費量が多く、次いで経済発展が著しいアメリカが来て、第3位に日本がランクインするそうです。
貿易に関する政策にもよりますが、今後個人で海外から商品を輸入しやすくなっていくと、海外製のダンボールを入手する機会が増えてくるかもしれません。ダンボールの素材や製法にそれほど大きな違いはありませんが、パッケージのデザインなどに注目してみたいですね。
ダンボールに関するデータを語る上で、大きな特長の一つであるリサイクル率の高さに触れないわけにはいきません。ダンボールはリサイクルの優等生とも呼ばれており、ほぼ100パーセントリサイクルが可能な素材です。実際に95パーセント以上の回収率を誇り、ここ数年では96パーセントを越えることも。
強いニオイが付いてしまったり、油がしみ込んでしまったりするとリサイクルには適しませんので、可燃ごみとして処理することもありますが、現在製造されているダンボールにおいて、原料の9割以上は古紙が用いられています。不足する分は計画的に管理された森林で、合法的に伐採された木材を使用しています。かつてのように自然を無差別に破壊するようなことはなく、今後も安心してダンボールを利用していくことが可能です。
ちなみに紙のリサイクルと聞くと、最終的にはトイレットペーパーになると思われがちですが、ダンボールとトイレットペーパーの手触りや強度が異なることから、ダンボールからトイレットペーパーへという流れはあまり考えられません。紙にも用途によって、向き不向きがあるのですね。皆さんの手元にあるダンボール、何度も何度もリサイクルの旅を経てきたことでしょう。
いかがでしたか?ダンボールに関する様々な具体的データを見て詳しくなると、さらにダンボールへ親しみが湧いてきますよね。マメ知識として周りの人に伝えたくなるダンボールデータ、ぜひ探してみましょう。
※統計データ参考
経済産業省「経済産業省生産動態統計年報 紙・印刷・プラスチック製品・ゴム製品統計編」
全国段ボール工業組合連合会