イテテ…、ギックリ腰になった時の猛烈な痛み、経験者にしか分かりませんよね。ですが、重い荷物を持った翌日の筋肉痛や、腰が張るような痛みは誰もが経験しているのではないでしょうか。
今回は、重いダンボール箱を持ち運ぶことが多い「引っ越し」というシチュエーションについて考えてみたいと思います。主な運搬作業は引っ越し屋に頼むとしても、梱包する準備段階や引っ越し後の整理などは、やはり自分で運ばなくてはなりません。そこで、ダンボールの持ち上げ方や運び方など、マル秘テクニックを含めご紹介していきます。
引っ越し屋に勤務したことのあるプロの意見も聞いてみました。
1.ラクに運ぶためのダンボール梱包
1-1.詰め込み過ぎない
1-2.重い・軽いを明示
1-3.割れ物に注意
2.ギックリ腰を防ぐ運搬法
2-1.持ち上げる方法
2-2.上手に運ぶ方法
3.マル秘テクニックを試す
3-1.不思議な二段重ね
3-2.なぜそうなるの?
4.引っ越し屋が語るプロのコツ
4-1.基本に忠実
4-2.コルセット着用
4.取っ手付きのダンボール
4-1.後付けの取っ手
4-2.強力テープの登場
まとめ
ダンボール箱の持ち上げ方・運び方へ言及する前に、ラクに運べるようなダンボールの梱包法を見ていきましょう。準備段階で工夫をしておくことで、後々助かるケースも多いのです。
まず第一に、ダンボールへ荷物を詰め込み過ぎて、重くしないことが求められます。引っ越し料金を安くするために、できるだけダンボールの個数を減らそうとする人もいますが、ダンボールわずか数個の増減で、それほど料金が変わる訳ではありません。会社にもよりますが、一般的に料金は引っ越しの時期や移転先への移動距離、作業人数等が基準となります。
引っ越し業者へ見積もりを取った経験がある方は分かると思いますが、ダンボールはサービスとして多めに渡されることがあり、それほどダンボールの個数を気にする必要はないのです。ですから、1つのダンボールにギリギリまで詰め込むのではなく、ある程度スペースを作って上手に詰めていくことがポイントとなります。
ダンボール箱の外側に、内容物や搬入先の部屋の名前(寝室・子ども部屋など)を記入するのは基本ですが、重い・軽いも分かるようにしておくと、持ち上げる際の心構えができます。フンッ!と力んで持ち上げたら軽かった…というのは良いですが、軽いと思って中途半端な姿勢で持ったら重かったというのは、腰を痛める要因となります。
また、ダンボールを引っ越し先で積み上げる場合に、軽いものが下で重いものが上に来ると崩れてしまったり、ダンボール箱が凹んでしまう可能性もあります。それを防ぐためにも、重い・軽いを明示しておくと良いのです。
食器やガラス製品などは、割れないよう厳重に梱包する必要があります。エアキャップや新聞紙などを活用することになりますが、ダンボール箱の中でガチャガチャと動かないようにしなくてはなりません。割れてしまう可能性がありますし、ダンボール箱の中が気になり、持ち上げる姿勢や運搬中に気を付けるべき態勢が疎かになってしまうからです。エアキャップなどの梱包材自体は軽いので、ケチらず十分に詰めるようにしましょう。
それでは、いよいよ実践に移りましょう。ダンボールの重さは書籍が入っているとして、米袋10キロぐらいをイメージしてください。
ダンボールを持ち上げる際は、角を持つようにします。手前左端下部を左手で持ち、その反対側である右端上部を右手で上から押さえます。側面を持つと滑りやすいですし、身体から離した状態になるため、重く感じてしまうのです。
できるだけ腹部へ引き付けて、片膝をついた状態で手前から浮かせます。ダンボール箱の角が手のひらに食い込んで痛い時は、必ず軍手や作業グローブを着用しておきましょう。膝が地面へついている足に力を入れ、背中を反らすような状態で持ち上げます。この時、腕は伸ばして荷物を身体に預けるような感じにしておくと良いでしょう。
無事に持ち上がったら、次は移動です。背中を反らし腕を伸ばした状態をキープしつつ進みます。重いと前のめりになりがちですが、身体に負荷がかかり腰を痛める原因となってしまいます。さらに目が足元にいくと、やはり前のめりになりますので、事前に移動先までの足元の安全を確保しておく必要があります。
次に階段を使用する場合ですが、足を踏み外しては元も子もありません。そこで、身体を少し斜めにして視界が確保できる状態にします。足の向きは横というより少し斜めにし、階段をしっかりと踏みしめていきましょう。
何か簡単に運ぶ方法はないの?とお考えの方、実は運搬テクニックがあるのです。重さの感じ方は人それぞれですが、試してみる価値はあると思いますので、ぜひ実験してみてください。
その方法とは、重いダンボールと軽いダンボールを二段重ねにして持ち上げるというもの。それだと、さらに重くなるだけでは?と考えますよね。例えば、軽いダンボールの中は空っぽでも良いのです。ダンボール自体は重くありませんので、総重量はそれほど変わりません。ポイントは、軽いダンボールが下で、重いダンボールを上にすること。こうすると重いダンボールを一つだけ持った時よりも、軽く感じるというのです。
軽く感じる理由、それは重心の位置が変わるからです。人間(大人)の重心は、だいたいヘソの上辺りです。その重心にダンボールの重心を近づけることによって、軽く感じるのだそうです。重い荷物だと腰より低い位置に重心が来てしまい、ズシッと体に負荷がかかります。ですが、軽いダンボールを下にすることで重いダンボールの重心が上の方へ来ることになります。
ただし、あまりにもダンボール箱が大きいと視界を遮ってしまうことも考えられますので、程よいサイズのダンボールで試してみてください。
毎日多くの荷物を運ぶ引っ越し屋さん。次から次へと手際よく運んでいく姿に目を奪われることもあるでしょう。マッチョな体型の人だけでなく、意外とスリムな人も働いていますよね。実際に引っ越し会社で勤務したことのある人に、現場の様子やプロの運び方のコツなどを聞いてみました。
引っ越し屋の現場では、新年度を迎える3月末から4月にかけて引っ越しが立て込む時期は、特に身体への負担が大きいとのこと。重い荷物を運ぶのは元より、引っ越し先への長距離運転によって腰が痛くなるというケースも。立て続けの作業になる場合は、何より基本に忠実であることが大切と教えられたそうです。
厚生労働省からも「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」というリーフレットが発行されている通り、引っ越し屋を含む運送業務に携わる方は腰痛に気を付けなくてはなりません。このリーフレットには「作業別腰痛予防対策のポイント」が記されていまして、積み込み・積み下ろし・運転に至るまで、図解入りで詳しく基本動作が掲載されています。現場において作業中にギックリ腰を起こしたのでは、引っ越し自体が完了しませんので、そういった意味でも基本を大切にしているそうです。
少し腰が張っている時は、整体やマッサージに通ったこともあるのだとか。お風呂でゆっくりと温めるのも良いですが、作業中にコルセットを着用するというのがおすすめだそうです。コルセットとは腰に巻き付ける幅広なベルトで、かつては女性がウエストを細く見せるためにギュッと巻いてドレスを着用していました。現在では、腰痛対策の器具として用いられることがあり、男性も若者から高齢者まで幅広い世代の人たちが愛用しています。
コルセットを巻けば、自然に背筋がピンと伸び、普段は猫背な人であっても身体を程よく反らした状態をキープできるのです。これは、重いダンボール箱を持ち上げる姿勢として適しており、見えない手が腰をそっと支えてくれているような感じ。夏でも使えるような通気性の良いものから、冬に腹部を温めてくれるものまで様々。ドラッグストア等でも手軽に購入することが可能です。
ここまで、ダンボール箱の持ち上げ方や運び方、そして運搬テクニックなどを見てきました。身体のサポートとしてコルセットといった道具も取り上げましたが、今度はダンボール箱の方に工夫を施してみましょう。
あまりにも重いダンボール箱ですと破損する可能性もありますが、ある程度の重量なら後付けの取っ手を使用するという方法があります。一部のダンボール箱には、両サイドの平面に小さな穴が開いていますよね。これは持ち運ぶための取っ手であり、スーパーなどで箱買いするとこのようなタイプのダンボールを見かけます。
もし穴が付いていないのなら、ダンボールに工作をしてみましょう。取っ手パーツのセットも市販されています。例えばダンボールの平面に穴を開けて、補強版を取り付けます。そこに紐を通して両手持ちができるようにするのです。イメージ的には、鍋の縁の取っ手を両手で持っている感じでしょうか。補強版には強力な接着剤が付いているため、箱をしっかりと支えてくれます。
それほど重量がないものなら、外側にペタッとシールを貼り付け、紙袋のような取っ手を付けるタイプも販売されています。あくまで重量に気をつけなくてはなりませんが、テレビのディスプレイなど平たいものが入った薄いダンボール箱なら、このシール式取っ手が活躍することでしょう。
世界的に有名な化学/電気素材メーカーのスリーエム社が開発した、「キャリーハンドル」というテープが話題になったことがあります。テレビ番組で魔法のテープとして紹介されました。幅がわずか25ミリ/35ミリのテープなのに、何と目安として最大12キログラムまで運べるそうです。穴も開けず、箱の上から細長いテープをペタッと貼るだけですので、扱い方は簡単です。引っ越し作業中にその「キャリーハンドル」があれば、とても便利そうですね。
引っ越し前後は、役所を訪れて各種手続き取るなど、色々やることが多いため、ギックリ腰で寝込むわけにはいきません。さらに、引っ越しを終えてホッと一息ついてからは、怒涛の整理作業が待っています。できるだけスピーディに行うためにも、ダンボール箱の上手な持ち方・運び方を身に着けておきましょう。引っ越し以外のシチュエーションでも、大いに役立ちますよ。